みなさんそれぞれに得意科目があると思います。また全科目でそこそこ取れるというアベレージ型もいるでしょう。
しかし、中学受験において「算数が得意」ということは特別です。
4,5年生であれば算数を得意科目にすることを全力でおすすめします。
得意科目とは?
まず得意科目の定義ですが、私にとって得意科目とは「志望校の入試において合格者平均以上を取ること」と考えていました。
自分の基準で「この教科が得意!」などは得意科目とは言えませんし、「好き」と「得意」は異なります。他者に差をつけられることが前提です。
実質競争率2.0倍の入試だと半数が合格します。その合格者の中の平均ですから、ざっくりで受験者の上位25%ですね。2.5倍の入試なら上位20%。このことからも簡単でないことは容易に想像できます。
バランス良く得点できるに越したことはないのですが、たかだか12才の子供です。苦手教科もあるでしょう。それを補って余りある教科を作りましょう。それが算数だと「いいことが多いですよ」という話です。
なぜ算数なのか?
よく言われるのは「点差をつけやすいから」「1問あたりの配点が高いから」とかですね。
そのとおりだと思います。でも、他にもいいことがあります。
算数が人並み以上にできるということは、論理的思考ができるということに繋がります。
これは他教科にもいい影響を与えます。条件を整理して根拠を考えるようになりますから、理科の実験問題や国語の理由説明などにも役立つのです。
「でも、お高い難しいんでしょう??」
いいえ、この偏差値帯において中学受験の算数は決して難しい科目ではありません。
根拠として、統一日(前期orA日程)主な学校の最高得点を見てみましょう。
男女区分けなしの受験者最高得点です。赤太字は満点です。
学校名 | 年度 | 国語 | 算数 | 理科 | 社会 |
同志社 (各教科:40) | 2021 2020 | 40 38 | 40 40 | 38 37 | 40 38 |
同志社女子 | 公表なし | — | — | — | — |
同志社香里 (国算:120,理社:80) | 2021 2020 2019 | 117 103 116 | 120 120 120 | 79 74 78 | 80 78 80 |
同志社国際 | 公表なし | — | — | — | — |
関学中学部 (国算:200,理100) (2019:各教科100) | 2021 2020 2019 | 189 196 96 | 200 192 100 | 90 93 86 | — |
啓明学院 (国算:100,理50) | 2021 | 96 | 100 | 46 | — |
立命館系列 | 公表なし | — | — | — | — |
関大系列 | 公表なし | — | — | — | — |
ご覧のとおり、この偏差値帯の学校ですと算数の最高得点は満点になることが多いのです。
そのわりに算数の受験者平均は他教科に比べて低いことも多々あります。ということは、算数がかなり苦手な受験生が一定数いるということ。
つまり、得点差をつけるチャンスだということになります。
国語、理科、社会も同じように得意とする受験生がたくさんいるはずですが、算数と比べると満点が少ないことがわかります。加えて点差をつけやすいかといえば、選択問題も多いのでそれほどでもありません。
何名が満点を取っているかまではわかりませんが、一人や二人ではないと思っています。満点がいるということは1問ミスの受験生もゴロゴロいるわけです。
統一日午前ですから持ち偏差値よりかなり低い学校をあえて選ぶとは考えにくいでしょう。ということは、四教科トータルでは同じような偏差値でも、算数で満点に近い点数を取れているライバルが一定数いるということになります。
公表はされていませんが過去の入試問題を見るかぎりでは、同志社女子、同志社国際、関大一中、関大北陽も算数の最高得点は満点だろうと予測できます。
あ、立命館中学の算数は別格なので例外と思ってもらってかまいません。国公立理系を意識したALコースがあるせいか頭一つ抜けて難しいと感じました。満点はなかなか出ないのではないでしょうか。特に後期の算数はえげつないです。
また、算数は国語と並び主要科目なので優遇する学校も少なくありません。
たとえば、同志社香里は「算数・国語」の配点は「理科・社会」の1.5倍です。さらに3教科アラカルト方式にあてはめれば、得点が1.25倍になります。
仮に算数が満点(120点)なら、1.25倍で150点になります。香里前期の合格最低点は300点を超えたことはありません。つまり合格最低点の半分以上をGETしたことになります。あとは「国語(配点120点)」と「理科or社会(配点各80点)」で120/200点をとれば余裕で合格です。
同志社女子もWRコースが「算数・国語」の配点は「理科・社会」の1.5倍(LAコースはフラット)ですし、関学は「算数・国語」の配点は「理科」の2倍、立命館も「算数・国語」の配点は「理科・社会」の2倍ですね。おまけに2023年度から同志社中学は算数・国語の2教科受験です。
さらに午後入試に採用されることが多い2教科受験(算数・国語)、あたりまえですが算数の比率が50%です。
算数が満点なら国語は30点〜40点ぐらいで合格できると思います。
満点は少し極端な例だとしても、9割(2問間違えまで)以上で世界が変わります。
ご存知だと思いますが、この偏差値帯の算数入試問題は塾の公開模試、合格判定模試よりかなり易しいです。
模試は最難関を狙う受験生も受けますので、それなりのレベルの問題も入っています。
大事なのは5年生
関西の中学受験塾では5年生の2月上旬には算数の受験範囲を一通り習い終えると思います。6年生は主に復習と実践演習になる塾が多いのではないでしょうか。
もうおわかりですね。入試範囲の大半は5年生時に習うのです。算数で勝負するなら5年生の単元はすべてが重要です。特に後期は「速さの比」、「図形の比」など比に関する単元が頻発します。全力で比に取り組んでください!
難問を解く必要はありません。中学受験塾のテキストなら難易度を3段階ぐらいに分けられていると思います。「基本問題」「標準問題」「発展問題」のように。
5年生なら「基本問題」だけで十分です。そのかわり徹底しなければなりません。
6年生になれば、その基本問題で身につけた解法をプリントなどの実践演習で、塾がさらなる高みへ導いてくれるでしょう。
中学受験算数の問題パターンは160〜170種くらいだったと思います。中堅校ならこんなに必要ありません。導入文は「速さ」なら電車、バス、自転車、徒歩のペースなど、「植木算」ならバスの発車間隔や植樹の間隔など異なりますが、解法や思考の手順などはほぼ同じです。
より多くの問題パターンを経験し、インプットだけでなくアウトプットし続ければ得意科目にすることができると思います。それには、やはり5年生時の算数がかなり重要と言わざるを得ません。
まとめ
最初から算数が得意でなくても大丈夫です。
保護者として一番大切だと思うことは「算数をキライにさせないこと」と「苦手だと思わせないこと」。ですから問題が解けなかったり、テスト結果が良くなくても感情的にならないでください。これは算数だけに限ったことではありませんが、気持ちよく机に向かわすことができれば十分です。
各単元を時間をかけて丁寧に進めつつ数をこなせば、基本問題は理解できるはずです。
- 塾テキストの基本問題・基礎問題を徹底的にやり込む
- 計算問題は見直しなしでも一発正解できるレベルにしよう
- 最終的に自力で解けるように取り組もう
- 5年生時の算数は超大事。授業・単元テストを大切にしよう
- 算数において志望校の合格者平均点超えを目指そう
- 一通り習い終えたら、単元別に問題が並んでいない問題集にも取り組んでみよう
(下剋上算数など)
算数を得意科目にすることは簡単ではないかもしれません。
しかし得意科目にできた時、中学受験においてかなり有利なポジションを獲得できます。
ガチで取り組む価値は十分にあります。
最後にもう一度言いますが、いちばん大事なのは「算数をキライにさせないこと」です。
算数を好きになり、得意科目にできることをお祈りしております。
最後まで読んでいただき、ありがとうございました。
みなさんを応援しています。