関西大学第一中学の入試結果が公表されましたので考察します。
入試は2023年1月14日に行われました。
後期試験やB日程など、中学受験日程が多様化する中で、関大一中は統一日午前のみの一発勝負を継続されています。
このあたりが、伝統校らしくてかっこよく、またその姿勢に美しさすら感じています。
それでは見ていきましょう。
2023年度 受験者数・倍率
関大一中はいい意味で変わりませんね。
ここ数年で変わったことといえば、合格発表が本校での貼り出しからWEBサイト上での発表になったことぐらいでしょうか。
募集人数は例年通り約240名。
志願者数・合格者数・入学者は男女別に公表されていますが、合格は男女の区別なく成績上位者から出していくシンプルなスタイル。
合格最低点さえ超えればいいので、トータルの出願者数と競争率だけ気にしていればいいです。
もう男女の区別を意識する時代ではなくなってきているので、時代に合った選抜方法と言えるのかもしれませんね。
受験形式は「2教科型(国語・算数)」と「4教科型」があります。
4教科型では「(国語+算数)✕2」の点数が高ければ、そちらが得点となります。
では、志願者数・倍率がどうなったかを見ていきましょう。
実際の受験者数が公表されていませんので、実質倍率を出すことはできませんが、統一日午前の一発勝負なので、ダブル出願や急な体調不良で欠席者がいても、せいぜい10名程度だと思います。
( )内の数字は前年比です。
志願者 | 合格者 | 倍率 | |
4教科型 男 | 178(+19) | 100(+4) | ーーー |
4教科型 女 | 117(-14) | 61(-9) | ーーー |
2教科型 男 | 106(+22) | 49(+6) | ーーー |
2教科型 女 | 115(+24) | 46(+3) | ーーー |
合計 | 516(+51) | 256(+4) | 2.0(+0.2) |
前年は志願者を28名ほど減らしましたが、今年は前年比でプラス51名と巻き返し、総数でついに500名を超えて来ました。
合格者数が少し多めにでたので、倍率は2.0倍となっていますが、ここ数年ではもっとも厳しい戦いになりました。
中でも目につくのは、2教科受験の志願者が男女ともに前年比で約2割も増えていることです。
同志社中や関学B日程・関大北陽・関大中等部後期など2教科で受験できる学校が増えている影響が少なからずあるのかもしれません。
大学入試でもそのような傾向があって、私立文系なら1教科入試などもありますから一種のトレンドみたいなものなのでしょうか。
昭和の人間からすると、数年がんばってきたのに1,2時間で判定されてしまうことは少し物足りなく感じてしまいますが、子どもたちの負担を減らす意味では良い施策なのかもしれません。
それを反映するように、4教科女子は苦戦しています。
今年も合格者を9名減らして、直近2年でマイナス26名です。
約1割なので小さい数字ではありません。
ここ数年の女子の動向は、4教科の受験者数が減少傾向にあり、2教科受験を選択する女子が年々増加しています。
憶測の域を出ませんが、加熱する中学受験に対して「女子がそこまでやらなくても…」という親心かもしれません。
実際、統一日の午前を2教科受験にすれば、後期試験・B日程・二次試験は2教科で乗り切れる学校が多いので最初から2教科に絞っているとも考えられます。
そのためには国語か算数を得意科目(合格者平均レベル)にしておく必要があります。
安定して実力を発揮できればいいのですが、とはいえ若干12才の子どもです。
しかも統一日午前、最初の受験が第一志望校という緊張する状況で最大のパフォーマンスを出さなくてはいけません。
いい意味で図太くなければ、平静ではいられませんよ。
「前受けで受験を経験できるから大丈夫」と思われるかもしれませんが、保護者目線になりますが、個人的には「前受け」と「統一日午前の受験」はまったく別物でした。
「前受け」については、いずれ別の記事で書く予定なので今回は割愛します。
平均点・合格最低点
次に受験者の平均点と合格最低点を見ていきます。
以前は男女別に平均点を発表されていましたが、現在は男女区別なしの集計となっています。
男女別に合格を出していないので当然といえば当然ですね。
ここにも「性別は関係ない」という考え方が取り入れられているのでしょうか。
国・算・理・社、各100点満点凸凹なしのフラットな配点です。
算数や国語が苦手でも理科・社会で挽回可能な配点です。4教科型のほうがカバーできるので有利かと思いますが、算国が得意であれば2教科型でもOKですし、受験準備が遅れた受験生でも2教科なら十分間に合います。
( )内の数字は前年比です。
国語 | 算数 | 理科 | 社会 | 合計 | 合格最低点 | |
4教科型 | 70(-6) | 68(+1) | 64(-2) | 72(+7) | 274(±0) | 283(-4) |
2教科型 | 71(-5) | 68(+3) | ーーー | ーーー | 139✕2(-4) | 283(-4) |
今年は国語が難化して、社会が易化、算数と理科は前年並みです。
国語と社会は前年とは正反対の結果なので、バランスを取りに来た感じでしょうか。
総合的に見ると、それほど点数のばらつきがなく、合格最低点が7割ちょっとということで学校側の狙いに近い結果だったのではないでしょうか。
平均点と合格最低点が昨年とあまり変わっていないので、問題レベルも前年並と感じるかもしれませんが、今年の問題は難しかったのではないかと思っています。
理由は、受験者数の増加(1割増の500人超え)・競争率の割に平均点は前年と同じで、合格最低点に至ってはマイナス4点となっているからです。
競争率が上がれば、比例して平均点や合格最低点が上がってもおかしくありません。
それが前年並みということは問題が難化していると考えられるのではないでしょうか。
四教科型
まず目につくところで、昨年は社会の平均点がマイナス16点だったこともあり、今年は少し易しくしてくるだろうと予想していました。
結果は予想通りプラス7点で平均点が72点でしたので、ちょうど良いバランスなのではないかと感じました。
社会が易しかった分、四教科型が有利かと思いましたが、理科の平均が低いので優位性はそれほどなさそうです。
例年は四教科が有利かと思える結果になることが多かったですが、今年は有利不利はなかったように感じました。
個人的には四教科をがんばって挑んだ受験生が報われて欲しいと思う気持ちはありますが、それもすでに古い考えなのかもしれません。
それでも4教科型は「国語・算数」の点数がよければ、2教科型としての得点にもなるので、いずれのパターンになっても有利であると感じていますし、入学後も理科・社会は受験勉強での貯金のおかげで随分と楽ができると思います。
その分を「英語」に使って、スタートダッシュをかましてやりましょう。
とはいえ、4教科を仕上げるにはそれなりに時間も費用もかかります。コスパ重視の考え方なら抵抗があるかもしれませんね。
二教科型
今年は例年よりも、平均点・問題レベルのバラつきが少なく、二教科型の受験生が不利になる要素は少なかったのではないかと考えます。
社会は易しかったようですが、理科が難しかったので相殺された形になり、合否に大きな影響が出るほどの差ではなかったように感じました。
二教科型は、たしかにコスパは良いのですが、コケた時に四教科型とは違って他教科で挽回が難しくなります。
挑む場合は、極力ミスしない方策を真剣に考えておく必要があります。
まとめ
2023年度 関大一中の入試をまとめます。
- 前年比で受験者数が51名増加し、500名を突破。ここ数年では一番の激戦になった。
- それにともない競争率は0.2ptアップの2.0倍となり、総合的に難化した。
- この競争率なのに合格最低点は4点下がったため、問題レベルが上ったと予想される。
- ここ数年は四科型で受ける女子が減少し、二教科型を選ぶ女子が増加傾向。
- 4教科とも安定した平均点でバラツキは少なかった。有利不利のない舞台設定。
- 今年も2教科型で十分に戦える入試だった。
作問者が受験者平均をコントロールするのは難しいと思いますが、おおむね6割5分ぐらいを狙っているように感じています。
今年度は競争率が高かったので上振れしたように感じましたが、総合的に非常にバランスの良い、安定した入試だった印象です。
来年の予想というと、おこがましいですが、個人的には来年の関大一中は狙い目になると思ってます。
今年の結果からそれなりに警戒されるでしょうし、特に男子は、今年より志願者を集めるのは難しいと考えます。
まあ素人の予想なので、あまり気にしないで、入学したい学校を受験してくださいね。
最後まで読んでいただき、ありがとうございました。