関西大学中等部の入試結果が公表されましたので所感を記します。
2022年1月15日(前期)17日(後期)に例年通りの形で行われました。
前年は比較的ラッキーな年(競争率が低い)でしたが、今年はどうだったのでしょうか?
それでは見ていきましょう。
概況
募集人数は前期で約60名、後期は約10名を合わせて男女で約70名です。2クラス分ですね。
併設の初等部から1クラス分が上がってきますので、中等部は3クラス編成です。
入試要項には男女別の定員に関する記述がないので、関大一中と同じく成績上位者から性別に関係なく合格を出していると考えていいように思います。合格最低点も男女別にはなっていません。
関大一中と関大北陽も男女に関する記述がありませんので、関大系の共通した方針なのかもしれませんね。個人的には試験結果だけで上から合格というのはわかりやすくて好感が持てます。
受験形式は「4教科型」と「3教科型」があり、3教科型は合計得点の4/3倍が得点(持ち点)になります。また「3教科型」は「算国理」「算国社」のどちらでもOKなので理科が苦手でも大丈夫。
関大一中は「4教科」か「2教科(国・算)」。
関大北陽1次は「4教科」か「3教科(国・算・理)」か「2教科(国・算)」、2次は「2教科(国・算)」のみなので、関大系で「算・国・社」で受験できるのはこの中等部だけになります。
地歴オタク(褒め言葉)にはチャンスが広がりますね。
2022年度 前期:受験者数・倍率
では、志願者数・倍率がどうなったかを見ていきましょう。
男女別々に公表されていますが、男女別に合格が出されているわけではなさそうなので合算で進めます。受験者数・合格者とも男女どちらかに偏っているわけでもわりません。
( )内の数字は前年比です。
募集人数 | 志願者 | 受験者 | 合格者 | 実質倍率 |
前期(男女 60名) | 125(+20):男59・女66 | 112(+25):男55・女57 | 68(+6) | 1.6(+0.2) |
まず昨年は1.4倍まで落ち込んだ前期の受験者数ですが、今年は1割ほど増加しました。
中学受験あるあるの揺り戻しですね。
実質倍率で1.6倍。合格者も多め。
妥当もしくはまずまずといったところでしょうか。2.0倍を切っているので、個人的にはまだ狙いやすいと感じています。
気になるところといえば、統一日にもかかわらず女子の欠席者が多いところでしょうか。人数にすると9名ですが、率でいうと10%を超えています。ダブル出願で他校を選んだのかもしれませんが、動きが読みにくいところがあります。
総合的には募集人数が少ないこともありますが、こじんまりとした受験のように感じています。
例年、実質倍率2.0倍以下で推移していますので、第一希望であれば十分狙えるチャンスがあるのではないでしょうか。
そして、今後も統一日の倍率は1.5〜1.8倍ぐらいと予想しています。
理由としては、個人的にですが「学費が高い!」ということ。ブルジョワな方々は気にされていないと思いますが、The庶民な私にはかなり気になりました。
もちろんそれに見合う教育や設備があるのは重々承知していますが、中学3年間の学費で他校なら高1までの4年分をまかなえるのではないかと思うほどです。
これはそれぞれ感じ方が違うでしょうから、マイナス要素ではありませんが。
2022年度 後期:受験者数・倍率
それでは後期も見ていきましょう。
志願者(出願)は増加しましたが、受験者自体は若干のマイナス。合格者が1割ほど減ったため実質倍率は0.2ptの増加となりました。
募集人数 | 志願者 | 受験者 | 合格者 | 実質倍率 |
後期(男女 10名) | 245(+20):男117・女128 | 144(-4):男71・女73 | 58(-6) | 2.5(+0.2) |
後期の0.2ptなので前年並み。実質倍率は2.5倍でした。
関関同立系の後期入試と考えれば、まだ許容範囲といえるのではないでしょうか。年度によっては3.0倍を超えてきますので。
ただ中等部の後期は募集が10名という入試ですので、受験者のちょっとした増減で倍率が大きく変動します。
あいかわらず事前の予想などはとても難しく、フタを開けてみなければわかりません。
募集は10名ですが合格者は例年60名ほど出しますので、それをどう感じるか。
大学付属狙いでこの後期を受験するなら、それなりのレベルが要求されます。肌感的には同志社系や関学中、立命館ALで十分に合格が狙えるぐらいでないと厳しいのではないかと感じています。
総合的には特筆すべき点はなく、前年並みの難易度と言ったところでしょうか。
今後も予想はしづらい入試で、何年かに一度は目をむくような競争率になりますので注意が必要です。
2022年度 前期入試 平均点・合格最低点
次に前期入試の受験者平均点と合格最低点を見ていきます。
まず平均点から。
こちらも男女別に公表されています。前年は女子がかなり優秀な数字を叩き出しましたが、今回は男女でほとんど差はありませんでした。ほぼ同点でバランスがいい印象です。
男子 | 女子 | 受験者平均点 | |
国語 | 48.5(-8.0) | 53.7(-10.0) | 51.1(-8.9) |
算数 | 70.3(+13.6) | 65.4(+8.7) | 67.8(+11.1) |
理科 | 59.1(-4.2) | 57.0(-8.4) | 58.1(-6.3) |
社会 | 63.5(-4.5) | 67.0(-7.1) | 65.3(-6.0) |
合計 | 239.9(+2.7) | 238.4(-13.1) | 239.1(-5.0) |
合格最低点 | 240.0(+8) | 240.0(+8) | 240.0(+8) |
教科別に見ると、算数のみがかなり易化したようです。算数の苦手な受験生は苦戦したかもしれませんね。
他3教科は難化。なかでも国語はかなり難しかったようで男子の平均は5割を切っています。
得点率を見ていると、国語・理科が難しく、算数・社会が易しい入試だったようです。
前年からは難化した社会ですが、理科との比較で易しかったことから4教科を勉強してきた受験生が有利だったと言って差し支えなさそうです。
全体平均は昨年から5点分の難化ですが、さほど変化がなかったと言えるでしょう。
受験生それぞれの得意教科によって明暗がわかれた結果になった感があります。
次に合格最低点ですが、8点アップして240点。得点率で言うと6割ですね。
問題レベルはわかりませんが、他校であれば7割前後が合格最低点になりやすい中で、6割であれば戦略次第で戦えそうな印象を受けます。
ただ不可解な部分もありまして…。
それは実質倍率1.6倍の入試で受験者平均点を取っても合格できないという事実です。
(受験者平均:239.1点/合格最低点:240.0点)
「平均点と中間点は異なる」ということは理解していますが、ここまでズレるものでしょうか?
たしかに他校と比べると受験者数も少ないので上下しやすいとは思いますが、振れ過ぎのように感じています。
ちなみに前年は1.4倍で、合格最低点は受験者平均よりマイナス12点でした。妥当だと思います。
仮説として今年は例年より突き抜けた上位層がかなり厚く、平均点を考えられないくらい引き上げたとか?例年、一定数いるはずの下位層がほとんどいなかったとか?
4教科受験からの3教科アラカルト方式の得点算出方法により、捨て教科を作った受験生の平均点が著しく低いとか?
想像ばかりで納得のいく答えを出せなさそうです。私の分析力が至らなくて申し訳ございません。
ちなみに昨年の合格最低点はは232点、一昨年239点でした。
ここ最近ですと、前期に関しては過去問で250/400を目標にすればよさそうです。
2022年度 後期入試 平均点・合格最低点
最後に後期入試の受験者の平均点と合格最低点を見ていきます。
募集は約10名、合格者は64名で前期と同じくらい出しています。6人に1人が入学と読んでいるようです。
正直どんな層が受験しているのかわかりません。一時期よりR4は下がっていますが、それでも関大一中より難しく、同志社系前期(女子LA以外)に近いレベルです。大学付属系を狙う受験生からは単なる併願校とはならず、前半で1校抑えてのチャレンジ要素も含まれていそうです。
男子 | 女子 | 受験者平均点 | |
国語 | 66.6(+7.9) | 71.1(+6.0) | 68.9(+7.2) |
算数 | 60.8(-10.6) | 58.5(-11.4) | 59.6(-11.1) |
理科 | 67.7(+0.1) | 65.8(+0.3) | 66.7(+0.1) |
社会 | 65.1(-4.8) | 60.2(-13.7) | 63.5(-8.2) |
合計 | 260.0(-4.6) | 259.9(-12.2) | 259.9(-8.2) |
合格最低点 | 273.0(-8.0) | 273.0(-8.0) | 273.0(-8.0) |
女子の平均点が大きく下がっているように見えますが例年に戻ったと感じました。
前回がたまたま優秀な女子受験生が集った可能性が高いです。
前回難化した国語を易しめに、そして算数を思いっきり難しくしてきましたね。
前期とは真逆の傾向です。
理科は前年並。社会は若干の難化、前回女子の社会は異常なくらいレベルが高かっただけです。
トータルの平均としては男女でほぼ同点。こちらも前期同様にいいバランスです。
全体平均としては、8点ほど下がっていますが後期なので誤差の範囲内かと。
受験者は増えましたが問題レベルの難化がそれを上回って、平均点同様に引き下げられたようです。
合格最低点は前回からマイナス8点で273点。得点率7割は下回ってきました。
問題レベルの上下はもちろんありますが、後期は7割前後に着地することが多いですね。
となると、8割の320点はキツイとしても7割5分の300点を目標にするのが妥当と言えそうです。でも、これってかなり厳しく感じます。
ご家庭それぞれに受験プランがあると思いますが、ココを受験するなら早い段階で安全校を抑えておくことをおすすめします(大学付属狙いの場合)。
難関進学校からの後期受験であれば、さほど気にする必要はないのかもしれませんが。
募集人数も少なく、前期試験でさえ志願者数を読みにくい学校ですから、後期試験なんてカオスです。
昨年の易しさから今年はもっと志願者を集めると思いましたが、それほどでもなかったです。これが来年以降も続くのかは不明ですが、警戒はしておいたほうがいいでしょう。
まとめ
2022年度 関大中等部の入試をまとめます。
- 受験者数は前期・後期ともに増加(前回が少なすぎた)。
- 前期競争率も比例してUP。
- 前期入試は算数が大幅な易化。国語は難化した。
- 実質1.6倍にもかかわらず、受験者平均点では合格できない事態に。
- 後期は総合的には前年並。
- 前期後期とも3教科アラカルト方式が採用される4教科受験が有利な傾向。
- あいかわらず競争率は予想するのは難しい。
- 前期のハードルはそれほど高くないので、第一志望なら初日全力で。
- 後期のみの受験はかなり余裕を持ってないとリスクあり。
JR・阪急沿線で立地も良く、校舎も初等部、高等部、大学と一体となっておりビルのよう。設備も素晴らしく初めて訪れたときは圧倒されました。その分、学費もハンパないですが(笑)。
給食がありますので仕事を持たれているお母さんはお弁当づくり不要なので良いかもしれませんね。
1年ごとに難化と易化を繰り返している印象ですが、油断なりませんので塾をうまく利用して情報収集を怠らないようにしてください。
最後まで読んでいただき、ありがとうございました。